Masuk3日が過ぎた。俺達は約4日後の任務に備え、毎日クエストがてらに街から離れた場所で鍛錬中だ。要するに毎日アリアにしごかれてるってことだ。毎回俺は死にかけてるけどね。1日1回の致死ダメージ無効の加護があるとはいえ、アリアは稽古中は容赦ない。毎日1回死んでるのと同じだ。今日は残り日数から計算して中日になるので、休息しようということだ。
目が覚めると、アリアはいつも通り女性化した俺にしがみついている。確かにこの体の状態だと女性的で柔らかいので気持ちがいいんだろう。だが毎日抱き枕にされるのも勘弁して欲しいものだ。
同じベッドで寝ててそういう気分にならないのかって? ならないね、全く。まず俺は女性に対してあまり良い思い出がない、だから基本的に関心がない。そしてこの寝相の悪い女神は確かに美人だが、俺と似たような外見だ、更に中身もぶっ飛んでいる、手に負えない。そんな相手に劣情は抱けないだろ? 下手したら俺が襲われると思う。 まあそんなとこかな。あ、でもおっぱいは素敵だと思う。唯一女性の崇めることができる点、それがおっぱいだ、どこの世界でも世界遺産だと思う。はい、説明終わり! てことで俺にこんな厄介な因子を植え付けたこいつはギルティなんだが、恩人でもある。邪険にはできないんだよな。因みに、まだ寝ているときのコントロールは上達しない、全くダメだ。王国までの恐らく泊りがけになる任務に臨む前に何とかしたいんだが、全くダメ。
「笑えるほどにセンス0ですねー」
毎回鼻で笑うこいつにはその内何かしらのお仕置きだ。しかし参った、せめて胸が目立たない大きさならいいが、女性体になると邪魔になるくらいの巨乳になるのだ。隠しようがない。
一人部屋になるか、せめてアリアと同室ならいいが、王国までは馬車で約1週間の道のりになるらしい。馬車で寝泊まりするってことだ、非常にマズイ。もういっそバラした方がいいのか? いや、エリックは笑って済ますだろうがユズリハには絶対おもちゃにされるに決まっている。 おっぱいへの崇拝のせいでこんな変化になってしまったのだろうかね。拝むのはいいが、拝まれるのは御免だ。残りの時間練習するしかないな。だが今日は1日オフだ。転生してこの数日ずっと鍛錬にギルド依頼と、ぶっちゃけバトルばっかりしているんだ。折角の異世界なんだし一人で街をぶらぶらと探索するのもいいだろう。ということでこのぐうたらに適当に食い物代を与えて、早速街を探索中ということだ。観光とも言うかな。
ギルドに顔を出すのも悪くはないが、毎日だしなー。居心地も悪くないしね。結局どのパターンの歓迎でもなかったけど、みんな今のところは良い奴らだし、俺のような新米にも気さくに優しく接してくれる。殺伐とした世界観じゃなくて良かったよ。ということで、観光気分で歩くリチェスターの街並み。ここのThe 中世って感じの街並みが俺はすごく気に入っている。街の真ん中に大きな時計台があって、観光やらデートスポットになっている。因みに時間の感覚や時計の設定も地球と変わりない、すごく都合良過ぎないか? まあ別に困らないからいいけどね。街の人達も気さくに挨拶してくれるし、やっぱここを拠点にして旅はしたいものだ。家もその内欲しいなあ。
露店で買ったリンゴ、こういうものも同じなんだよな、を齧りながら特に行く当てもなくぶらつく。様々な人種を目にしながら、やっぱ異世界なんだなーと感じる。でもみんな上手く共存してるように見える。混血とかも沢山いるんだろうな、異種族間のカップルとかもよく目につくし。ファンタジーじゃハーフって差別されたりしてるもんだが、ここではそんなことなさそうだ。ユズリハもハーフエルフだしな。それと意外なのは、路地裏に闇商人やそれっぽい建物すらないということ。奴隷を見かけないってことだ。
「奴隷制度はこの世界では禁忌とされていますよー。後ろ暗い組織とかはあるみたいですが、基本的にすぐに潰されますねー」
と、アリアが言った通りだ。うん、いいことだよ。ちゃんと仕事してるじゃないかアリア様。奴隷制なんてクソ過ぎるしな。だがアリアが言ったように非合法でそういうことをやっている奴らはいるんだろうな。アーヤ一行を襲撃した賊共が「女は売る」とか言ってたし。そういう奴らを見つけたら容赦なく潰してしまおう、胸クソ悪いしな。売る奴も買う奴も大差ない、どっちも同レベルだ。
ファンタジー世界で奴隷を買うような描写もあるけど、俺はそういうのは嫌いだ。おっと、考えている内に北の区画の方まで来てしまった。あれがこの都市長の屋敷か、へー、中々に豪勢な造りになってるな。城とまではいかないが、まるでパリにある宮殿だ。ヨーロッパじゃあよく目にするような造形をしている。
そういえばアーヤはここに公務で滞在してるんだったな。会えるといいなあ。いや、気配遮断で入れるんじゃないか? うーん、不法侵入だがバレなければいいかな? 悪戯心がムクムクと湧き上がる。やっぱこういうところは俺も人間なんだよな、悪いと思っても何となくまあいいかって気になってしまう。傍にぐうたらな女神がいるせいだな、いやいや、あいつは何故か俺よりもよっぽど人間くさいけども。てことで、鷹の目と千里眼発動。どうやら門から入って右手側、塔造りの上階の一室にいるようだ。一人で退屈そうにしている、侍女達も今は傍にいないようだ。せっかくだ、驚かせてやろうかな?
門番達から離れたところで気配遮断、そして正門を飛び越える。ペガサスブーツに魔力を力を注いであるので、着地したように見えても地面には触れていないので音はしない。さて、このままさて困った。入ったのはいいが、どうやって声を掛けよう? びっくりさせて大声を出されたら騒ぎになるだろうしな。あ、スキル<通信>で直接脳内に語り掛けてみるか。
(おーい、アーヤ姫、聞こえるかー?)
はっと顔を上げ周囲を見回すアーヤ。
「誰? 頭の中に声が? でもこの声は……」
(俺だ、カーズだ。偶々近くまで来たから、様子を見に来たんだ。今はスキルで脳内に直接話しかけてる。同じように脳内で伝えたいことを思い浮かべてみてくれ。念話ができるから) 「はっ、やはりカーズ様?! わかりました」 (あ、あー、聞こえますか、カーズ様?) (うん、OK、じゃあ顔出してもいいかな? なるべく騒がないように頼む) (はい、今は時間も空いてますし、構いません、ってどこにいらっしゃるのですか?) (窓のとこだよ、今から気配遮断のスキルを解除するから見えるようになる。大声は出さないでくれ) (はい、承知致しました)気配遮断を解く、アーヤから窓の側にいる俺が認識できるようになる。
「ああっ! カーズ様!!」
突然走り出して首にしがみ付いてくるアーヤ。どうした? とりあえず声がデカい!
「しー! しー! 大声出すとマズイって」
「お会いしたかったです! カーズ様!」聞いちゃいねえ! 大声出すなって! ぎゅーっとしがみ付いてくるアーヤを何とかなだめて落ち着かせた。やけに興奮してたなー。
「すみません、取り乱してしまって……」
「いや大丈夫、気付かれてはないみたいだし、いざとなったらまた気配消すからさ」とりあえず向き合うようにソファーに腰かける。
「すみません、お茶もお出しできずに」
「いや気にしなくていいよ、ちょっと様子見に来ただけだし。さすがに街中で刺客を放ったりするような真似はしてないようだな、目立つだろうし。まずは無事で安心したよ」 「そうですね。ここは警備も厳重ですし、今のところ危険な目には遭ってはいませんね」 「そっか、なら良かった。ていうか俺が一番怪しいよな、窓から侵入したし」 「ふふっ、そう言われればそうですね。でもどうやってこんな高い窓から?」 「フライの魔法で飛んで来たんだ、気配を消したままね。俺みたいな一介の冒険者が姫に合わせてくれって言っても、門前払いがオチだろうしな」 「相変わらず無茶するんだね」 「えっ?」 「あれ、どうして? 勝手に言葉が……」まるで俺のことを以前から知っているような物言いだ、何だろう、不思議な気分だ。やはり俺は彼女と何かしらの繋がりがあるのか? 例えば前世で……。
「ぐっ、頭が……!」
頭を押さえる。痛い、ダメだ思い出せない。止めとこう。
「大丈夫ですか!?」
アーヤ姫が此方に回り込んでしゃがみこみ、心配そうに俺の顔を見てくる。
「ごめん、俺はどうやら少し記憶を失っているらしくてさ。無理に思い出そうとするとこうなるんだよ」
自分の前世がどうとかは言えない。さすがに話が突飛過ぎて頭がおかしいと思われそうだしな。
「そうなのですか……? 私も最近不思議な夢を見ることがあるんです。この街の景色も懐かしい感じがしますし、でもある程度から先は記憶に靄がかかったみたいで分からなくなるんです……」
偶然だが、何か引っかかるな。互いに気にはなるが、それが何なのかは分からないって感じだ。
「どんな夢を?」
「こことは違う世界で、いつも年下の男の子に手を引かれているんです。何もわからないのに、ただ懐かしいってことだけは分かるんです」 「なるほど、もしかしたら前世の夢とかかもしれないな」カマかけだ、自分の前世とかは言えないが、聞き出すことは出来るかもだしな。
「なるほど……。そう考えると合点がいくかもしれないですね。その夢を見るようになってからは、王族という立場に疑問を感じることが多くなって……。何故か本当の自分じゃないような気分になるんです」
おっと、これは結構核心を突いたような発言だな。
「じゃあ夢の中では違う立場ってことかな?」
「はい、普通の一人の女の子で、その子と自由に走り回ったりしてて」うむぅ、でもそれだけだとやっぱりはっきりとは分からないか。俺の封印されている記憶との関連性も。
「もしかしたら、そういう願望があるのかもしれないな。自由になりたい思いが夢になって現れてるのかもしれないし。俺のイメージだと王族って堅苦しそうだし。だから様なんて付けなくていいよ、敬語も疲れるだろ? 友達みたいに接して欲しいかな」
「そうですか、もしかしたらそうなのかもしれませんね。友達ですか、対等に話せる人はいないので…。ではカーズ様が友達になってくれますか?」分からないことだらけだが、そのくらいはお安い御用だ
「ああ、よろしくアーヤ。もう俺達は友達だ、友達に敬語はいらないからな」
「は、はい……、いえ、分かったわカーズ。友達になってくれてありがとう! よろしくね。ってこんな感じでいいのかな?」 「うん、さっきよりずっといい。自然な感じだし、2人のときは敬語はナシな」その内俺の記憶の封印のカギが外れれば分かることもあるだろう、それまでは決して死なせるわけにはいかないな。いや、それ以前に絶対に死なせたくない、俺の魂がそう訴えている。うーん、と考え込む。そんな俺を傍でじっと見るアーヤ。
「あのね、カーズ?」
「ん? 何?」「えーとね、前に会ったときは、もっとこう、女性的な体つきだった気がするんだけど……」
はっ! しまった、忘れてたがあのときは完全に女性体だったんだった。やべえ、俺も大概抜けてるな……。誤魔化すしかない!
「いやいや、俺は男だよ、男! ほら、朝早かったし、パニックになってたから勘違いしたんじゃないかなー? ははは…」
自分ながらに苦しい、だがこればっかりはどう誤魔化せばいいのかわからん。
「それにほら、俺顔が女っぽいからさ、多分それも勘違いに繋がったのかも?」
うーんと頭を捻るアーヤ、そりゃそういうリアクションになるわ。あのエンゲル係数激高女神め、あいつのせいだ。
「そ、そうかもしれないよね。あまりに綺麗な顔立ちだったから勘違いしちゃったのかもね。ハァー、それに男の人で良かったー」
「え?」 「あ、いいえ! 何でもないの、あはは……」うん、何かあるような科白だ。それに俺もボロが出る前にさっさと退散しよう、それがいい。
「じゃあ、安全も確認できたし、俺はこの辺で帰るとするよ」
「あ、待って! この街のギルドマスターの方が面会に来られたのだけど。事件の解決までは護衛をしてくれるって」 「そうか、ステファンが来たのか。行動が早いことで。そうだな、俺ともう二人信頼できる腕利きも一緒だ。それに君は俺が絶対に守る。だから安心してくれ」その言葉を聞いたアーヤが再びギュッとしがみ付いてくる。
「絶対に守る……。何だかすごく懐かしい響きがする……」
アーヤの銀色に輝く長く綺麗な髪に触れ、俺は優しく頭を撫でた。
「俺も、なんだか君といると懐かしい気持ちになる。なぜかはわからないのに……。心配しないでくれ、絶対に守るから」
「はい、お願いします。公務が終わってから再会できるのを楽しみにしてるから」こんなことが遠い昔にあったような気がする。いつなのかはやはり分からないけどな。
「ああ、俺もだよ。あと数日無事でいてくれ。何かあったときにはすぐ駆けつける、さっきの要領で俺に通信を送ってくれ。常に繋がった状態にしておくから。あと窓は危ないから閉めとくようにな」
「はい、あなたも気を付けてね」俺はまだ名残惜しそうな目をするアーヤを残し、再び窓から飛び去った。別れ際のあの目も、なぜだか懐かしく感じる。彼女のことが気になるのもきっと何かがあるのだろう。確証はないし、今はまだ何も分からないが……。
さて街もそれなりに探索堪能したし、アーヤの無事も確認できた。それにあの姉設定の女神がうるさそうだし。おみやげ、ただし、食い物に限る、でも買って帰るか。明日からまた稽古をつけてもらうわけだし。これでも感謝してるんだぞ、そう思いながら俺は宿へと歩みを進めた。
ヨルムに乗って南門の外まで飛ぶ。「来い! 神剣ニルヴァーナ!」「お願い、ルティ!」「あいよー」「星芒より来たれ! クローチェ・オブ・リーブラ!」 各々が自分の武器を構える。南門前に着地させたヨルムから見る、南門に迫り来るベヒーモスの大軍。東門の方にも反応がある。黒や青や赤など、様々な色をした数十m以上はある巨体に、二本の巨大な角、四足歩行の全身を分厚い獣皮が鎧の様に覆われている。こいつは確かに並の武器じゃ傷一つ付けられないだろうな。 だが俺達には神格に神気、神器やそれに匹敵する武器がある。怖れることはない。そして神気を放った状態でヨルムと両親の再召喚を行った。陽子を破壊できる俺達にとっては紙切れも同然だ。「先ずは挨拶代わりだ。いけ、ヨルム!」「任せよ主! 受けろ、我が輝くブレスを!」 ドゴアアアアアアアアアアアアッ!!! 神気を纏った極光の竜の息吹が、放射線状に放たれ大地を敵ごと抉る! グギャアアアアアアア!!! 凄まじい威力のブレスに、迫り来るベヒーモス共が粉砕されていく。だがまだまだだ、俺の千里眼と鷹の目には、南東にある大迷宮から次々に敵が飛び出して来ているのが視える。どんだけいるんだ? 数万は下らないだろうな。だが俺達だけで掃討する!「アヤ、母さん! 南門の防衛と援護は任せる!」「任せて!」「はーい、漸く母さんの出番ねー」 ババッ! 飛び降りる二人。「イヴァ、親父! 東門にも反応がある! 二人はそっちを頼む!」「よっしゃー、行くぜ猫嬢ちゃん!」「任せるのさー!」 ダンッ!!「全員逆探知を発動させて自分達にターゲットを絞らせろ! エリック、ユズリハ、ディードは目の前の敵の掃除を任せる!」「はい! カーズ様!」「オッケー!」「任せときなー!」 ドンッ! 同時に飛び出す三人。「アリア、視えてるんだろ? 操られてる神獣達が」「ええ、神龍ケツアルコアトルにグリフォン、フェンリルにフェニックス。どうやら大将首は神鳥フェニックスに乗っていますね」「なるほど、ダカルーのばーちゃんの時と同じだな。アリア、グリフォンはお前がどうにかしろよ。ケツアルコアトルは、竜王兄妹、お前達に任せる! 行け!」「ハイハーイ、気が乘らないけど行って来ま―す」
舞台に乗ってストレッチをしていると、逆方向からハゲが上がって来た。「「「ハーゲ!!! ハーゲ!!!」」」 うーん、凄い声援だが地味に悪意を感じるな。まあ、あんなのでも国民には愛されてるのかな? とでも思っておくか。俺が毛根破壊したんだが、ちょっと不憫だ。「やはり貴様とは殺り合う運命のようだな。神殺しのカーズ!」 また変なことを言い始めたなあ。厨二か? やだやだ。それにダメージ肩代わり魔道具あるから死なねーよ。「いやいや、偶々くじ引きでそうなっただけだろ? 俺もあの竜騎士と闘いたかったんだけどなあー」「フッ、そうか。俺と闘うのが怖かったということだな」「いや、あいつの方が強いだろ? 意味の分からん敵意をぶつけてくるから、ぶっちゃけお前は面倒くせーだけだ」「おのれ…、貴様……!」「聞いたけどさー、お前自分がSランクの最速保持者だったんだろ? 所詮記録なんていつか塗り替えられるもんだ。今の最速はウチのニャンコだ。そんなしょうもない程度のことでイラついてたらストレスでハゲるぞ? あ、悪い、もうハゲてるんだったな。ごめんなー、ストレスかけて。俺に勝ったら治療してやるよ」 まあこいつの態度次第だけどね。「くっ……、貴様にはSランクの誇りは、プライドはないのか!?」 何だそれ? プライドチキンにプライドポテトか?「ねーな。そんなのしょうもないもんがあったら20ギールで売ってやるよ。後、ウチのPTが美人揃いだとか、邪神を斃したとか、そう言うのが気に入らないんだってな? 只のやっかみだろ。お前はガキか? そんなことにエネルギー割くくらいなら鍛錬でもしろよ、くっだらねーな」「貴様ああー…! 言わせておけば……!」 語彙が少ないなあ。そんなんで口で俺に勝てるとか思わないことだな。これでも元教師、アホなモンペのクレームとかで慣れっこなんだよ。いくらでも口が回るからな。『さて遂に最終戦ですが、ここまで我がリチェスター勢は連戦連勝。そしてリチェスター及び、現在世界中のSランク最強のカーズさんが相手。ハ、ゲフンゲフン、ガノン選手には打つ手がありますかね? アリアさん』『うーん、いや無理ゲーでしょー。レベルも3倍以上の開きがありますし、カーズはああいうヘイトばら撒く小物が大っ嫌いですからね。まあでも手加減しながら色々と技
魔導具を起動させて、エリックが舞台へと上がる。そして逆方向からは竜騎士のカセルが舞台へ跳び上がって来る。「「「カセル!!! カセル!!!」」」 凄い声援だな。先程のソフィアの時も凄かったが、この人は相当の人気だ。青銀と群青色の色彩の全身鎧だが、昨日の暗黒騎士のサウロンよりは軽量だ。頭にも竜の頭を模した様なヘルム。FF4の竜騎士みたいな装備だ。そして武器はやはり槍か。穂先が結構長めのスピアだな。刺突にも斬撃にも対応可能な2m程の長さの槍。鑑定、ドラグーン・スピアね……。やはりSランクか。何処で手に入れたんだろうな? 後で聞こう。 スピアとは英語で『槍』を意味する言葉の一つ。槍全般を指す場合は『スピア(spear)』が一般的だが、馬上槍は『ランス(lance)』、長槍は『パイク(pike)』など呼び分けはされている。最も、スピアタイプの槍をランスと呼んでいたりもして、呼称の使い分けは厳密ではない。 スピアとランスはよく混同されるが、決定的な違いがある。スピアは片手もしくは両手で扱うことができる歩兵槍のことだ。振り回し、先端に付いた刃で刺突・斬撃が可能。投擲用のスピアは『ジャベリン』とも呼ばれる。 対してランスは、中世から近代まで主にヨーロッパの騎兵に用いられた槍の一種。語源はラテン語で槍を意味する『ランケア(lancea)』、日本語では、『騎槍』とも訳される。単純に馬に乗った状態での専用武器のため、馬に乗ってない場合は全く使えないシロモノだ。 戦場だけでなく馬上槍試合でも用いられたランスは、『兜・鎧・剣・メイス・盾』と並ぶ、騎士を象徴する装備の一つであり、ファンタジーRPGなどでは、細長い円錐の形に『ヴァンプレート』と呼ばれる大きな笠状の鍔がついたものがよく描かれているが、必ずしも全てのランスがその形状をしているわけではない。 ランスと他の槍との決定的な違いは、基本的に刃物がついておらず、棒の先が尖っているか、前述した円錐型をし、敵対者を突き刺して攻撃するのが最も効果的な武器である点だ(この先端の形状は国によって異なる)。また、長さも特徴の一つで 一般的な片手武器の中でずば抜けて長く、4~5メートルを超えるものもあり(一般的なランスは扱い易くするため2m前後だが、それでも片手武器では一番長い)、接近戦闘用の
Sランク同士の興行試合の日になった。時間的には昨日と同じくらい。みんなリラックスしながら俺の部屋でスタンバっている。後は城の使いの人が迎えに来るのを待つだけだ。 昨夜の夜這い連中はアヤが目を覚ました時に、ベッドの左半分を占拠する様に鼾をかいてだらしなく寝ていた。そして事情聴取からの当然怒られていた。だからやめろって言ったのになあ。「「「「次はうまくやるし/やります/やるわー/やるのさ……」」」」 まあどう見ても反省してないけどね、こいつら……。全く、なんでこんなことをするんだか……? しかもまたやる気だし…もう知らね。「今日もアリアの姿がないということは……、やっぱり実況やるんだろうな」「昨日楽しそうだったもんねー」 アヤが答える。だよなー、絶対面白半分でやるだろうな。「盛り上がってたし、いいんじゃないの?」「今更なあー、あの人に何か言っても無駄だろうぜ」 エリユズの言う通りだな。あのアホは面白いと思ったことに対しては全力で命をかけてでも取り組むやつだからなあ。取り敢えず俺は両親がゲストに呼ばれないことを祈ろう。念の為に後で念話も送っておくか。「今日は恐らく昨日以上にレベル差がある分、更に一方的になるだろう。相手の仕掛けて来るスキルやら魔法、魔力撃も全て俺らに傷をつけられない。だから取り敢えずは一通り相手の手の内を見てやろう。俺達が先に仕掛けたら、そこで試合終了だ。一応イベントだし、多少は盛り上げさせないとな」「面倒臭いけど、仕方ないわよねー」「ちんたらしてたら先にしばきそうだけどなー」 この二人の戦闘狂なら充分ありえそうだが、折角の貴重な対戦だ。一瞬で終わらせるのは勿体無い。「まあ、そうかも知れないけどなあ。一応相手の戦術やらを見てみようぜ。相手のが俺達よりも形式上は先輩なんだし。あ、そう言えば俺はあのハゲと対決させられるんだろうか? ぶっちゃけ嫌なんだけど」「昨日の対戦順とかも勝手に決められてたし、違う相手かも知れないよ?」 アヤが言う様に、確かにプログラムとかもなかったし、世界的なイベントの割には意外と杜撰だよな……。勝手に実況までやってたくらいだし。盛り上がれば何でもいいのかね? 文化が中世だしそこまでキッチリじゃないのかもな。「そうだな。まあ誰が相手でもいいか。あのハゲは豪
うーん、どうしてこうなった……? 二回目。 城下のお祭りから、まだ食い続けているアリアを放置して某人気走る娘の様に腹ポコ状態のイヴァとルティを回収して帰って来た迄はいい。そしてみんなで一旦風呂にしようということで大浴場に向かった。普通は男湯に入るよね? でも女性体状態でピンクの浴衣に髪の毛も飾られている状態で男湯の暖簾を潜ろうとしてた俺は、女性陣に全力で止められた。まあ、冷静に考えたらこの状態で入るのは問題あるよね。中で男性体に戻ればいいんだが、その前に絶対に全身を「なんだなんだ?」って感じで見られるだろうし……。 でもね、躊躇なく女湯の暖簾を潜れる程、俺は自分を捨ててないんだよ。女性陣に散々説教されて、仕方なく女性体のまま女湯に入り、体を洗って、髪の毛は何故かみんなが我先にと言わんばかりの勢いで洗ってくれた。いやあ、ありがたいけどツラいな……。「お前は毎回無駄に苦労するよな……」 というエリックからの同情と憐れみの視線はともかく、「女風呂に堂々と入れるとか最高っすね、兄貴は!」 と思春期丸出しの発言でチェトレに蹴られていたアジーンにまで、変な気の遣われ方をされるというツラさ。まあね、見た目の性別は変えられるよ。でもねー、中身? 精神は男なんだよ? ウチの女性陣が多分おかしいんだろうと思っていたんだが、いや寧ろ気を遣ってくれているのかも知れないと最近は思う様になってきた。自宅でも女性陣の方が堂々と「一緒にお風呂に入ろうよ」と言って俺を連れて行く。その後で「女性体になってね」って言う感じで。 実際女性体の方がリラックスできるってのはある。男性体を維持するための全身の魔力の緊張を解きほぐすには女性体の方がいいんだよな。それに男性体でも顔の見てくれがね……、てことで男性陣は余り一緒に風呂ってくれない。全くこの思春期童貞共め……! 女性陣の方が度胸があると言うか恥じらいがないと言うか、肝が据わっている感じだ。一応男なので極力見ない様にしているけど、向こうは堂々と見て来るし、モロに触って来る。もうね、距離感がわからんのだよ。イヴァとかルティは子供と風呂ってる様な感覚、アガシャもそんな感じだ。まあ大抵はアヤも一緒だしな。と言うかアヤがいないとさすがに気が引ける。 タチが悪いのがユズリハやチェトレ、アリアのアホとくっついて
うーん、どうしてこうなった……? 祭典、夕暮れのお祭りの街中をみんなと歩いている俺は浴衣を着ている。いや、浴衣が悪い訳じゃないんよ。なぜピンクの女性用の浴衣もろもろのお祭りセットを着せられているのかということだ。そして仕方ないので勿論、女性体になっている。さすがに男性体の状態では違う意味で着れない。このお祭り堪能セットを用意していたのはやっぱりアリアだが、持って来たのはアヤだ。しかもノリノリで。みんなの分も頼んでいたらしい。「折角だから一緒に可愛い恰好をして、日本の夏祭りとか縁日みたいに過ごしたいなー」 などと目を輝かせて言うから、断れなかった。うーん、困った。着付けも髪の毛の飾り付けも全部アヤとウチのメイド組がやってくれた。もうこれまたノリノリで……。でもね、女性体の時の体を見られるのは何故かすんげー恥ずかしいんだよ。あー、いやマジ勘弁して欲しいけど、アヤがこういうシチュエーションも楽しみたいらしいので、もう今更だなあと逆らわないことにした。段々受け入れていってる自分がいるのは確かだが、アガシャに見られるのだけは一番キツかった。いやマジで。 バトル組の男性陣、エリックにアジーンは男性用の紺色やら暗めの配色の浴衣だ。城内で軽く飲み食いしながら待ってくれていた。って言うかそりゃ気まずいよ、それに俺も男性陣なんだけどね……。そしてユズリハにちょくちょく邪魔され悪戯された。クラーチでの悪夢を思い出すよね、これ……。言っとくけど、昔の日本の伝統みたいなことはしてないぞ。ちゃんと下も穿いてるからな。でも上は勘弁してください。 そしてお祭りセット一式をフル装備で城下に出て来たんだが、浴衣を着ている人が結構いることにも驚いたけど、夜店とか屋台とかも西洋のものと同じくらい日本ぽいのが結構あるんだよ。なんだろなあー、この世界は和洋折衷みたいな感じなんだよなあ。屋台には焼きそばとかたこ焼き、りんご飴、お面とか射的(コルク銃ではなくおもちゃの弓だが)、千本つりみたいなくじ引き(これはまず当たらないからやらない方がいいとみんなには言っておいた)、まあ千里眼や鑑定で視えるしね。うん、でも何だか懐かしい気分になる。 浴衣を初めて着るイヴァやルティは子供の様にはしゃいでいた。アガシャも初めて着たらしいが、少し照れ臭そうだったので、「可愛いし似合ってるぞ」と